第5回製剤技師認定試験(第2問)を解くために必要な情報をまとめてみました。
第 2問 下図の曲線①~③は,異なる添加塩濃度におけるコロイド粒子相互作用のポテンシャルエネルギーと粒子間距離との関係を示している.ただし,①及び②の極大点でのポテンシャルエネルギーは粒子の熱運動エネルギーより十分大きい.
疎水コロイドの分散安定性に関する次の記述の正誤について,正しい組合せはどれか.
a ①では,コロイド粒子の凝集が容易に起こる.
b ②では,凝集したコロイド粒子は振とうによって再分散させることができる.
c 添加塩濃度は③>②>①の順である.
d 添加塩の濃度が増加すると,コロイド粒子間の静電反発力が強まる.
e ②において図の極小点 P では,ファンデルワールス力に比べ静電反発力が少し大きい.
このようなコロイドの分散安定性における問題は、まずこの相互作用ポテンシャルエネルギーのこの図をまるまる頭にインプットして、それが何を示すのか読み取れるようにしてください。
この図の前提として、以下があります。
疎水コロイドの安定性は、コロイド粒子間(粒子間距離)におけるファンデルワールス力(図中の「引力」)と静電反発力(図中の「反発力」)の総和で決まる。
この理論は提唱したグループ名からDLVO理論というらしいけど、その理論名自体は問題にならないので覚えなくても大丈夫です。
VT = VR + VA
なんて書くこともあるけど、総合「Total」、反発力「Replusion」、引力「Attraction」の頭文字とっただけなので。
a ①では,コロイド粒子の凝集が容易に起こる.
まずは言葉のイメージ通り、この図において凝集≒引力、分散≒反発と考えてください。①では反発力が引力を上回っているので、分散が容易に起こると考えますので【誤】です。
b ②では,凝集したコロイド粒子は振とうによって再分散させることができる.
極小点Pより分子間距離が大きくなると、相互作用ポテンシャルエネルギーは0より若干小さくなる≒引力の方が大きいので、緩やかに凝集(≒引力)するそうです。しかし、凝集(≒引力)が小さい場合は、振とうによって再分散可能だそうです。
若干ってどれくらい?
そうですよね。でも①、②、③の3パターンしか出ないので安心してください。真ん中のやつ、②に対してしかこのような問題文は出ません。
でも極小点Pより前の粒子間距離が短いときは反発力の方が大きいやんけ!
ごもっとも。イメージとしては、「粒子間距離が短い→反発力が大きい→分散→粒子間距離が長くなる」を繰り返し、少しずつ極小点Pの右(x軸の右側)に移行していくと考えてください。
c 添加塩濃度は③>②>①の順である.
その前に①、②、③を安定な順番に並べ替えます。この時考えとしては「安定≒分散」です。そうすると①>②>③の順に安定≒分散していることが図から読み取れます。
疎水コロイドに電解質(溶液中でイオン形で存在しうるもの)(例:塩)を添加すると、凝集し沈殿することを凝析と言いますが、これは電解質により疎水コロイドの外側の電荷が中和(±0)されてしまうために反発力が減少するためです。なので添加塩濃度は不安定な順に並べればよいため、さっきの安定な順と逆となり、【正】です。
d 添加塩の濃度が増加すると,コロイド粒子間の静電反発力が強まる.
これは問題cを理解していれば、図からわかるかと思います。反発力は弱まる、【誤】です。
e ②において図の極小点 P では,ファンデルワールス力に比べ静電反発力が少し大きい.
これはラッキー問題(図を見ればわかる)かと思います。ファンデルワールス力は分子/原子/??間に働く力(〇〇間相互作用)を指し、引力と反発力両方の意味を持つのですが、主には引力を指します。しかし何も知らなくても、この問題において「この図は正しい」ことが前提です。この図において、点Pは下側(引力側)にいるため、「静電反発力が少し大きい」わけはないので、【誤】です。
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